小学校受験の準備期間

多くの家庭がおよそ年中の11月から、私立小学校入試までの1年間かけて準備しています。それと、小学校受験では家庭でのしつけが重視されます。しつけに関しては、もっと幼いころから日常的にしておくことが大事です。「桜の花はいつ咲くのか?」など季節の草花の名称や開花時期、「端午の節句はいつ? どんなことをするのか?」など年中行事について体験的に知っていること。また箸の持ち方や洋服の畳み方、凧揚げやコマなど、日本の文化・生活習慣を身につけ、体験していることも必要です。
これらは小学校受験にかかわらず大切なことです。受験を一つの目標とすることで、かえって家庭で意識的にしつけることができ、また夫婦で話し合う機会も増えるし、家族のかかわりも深まります。そこで、受験の準備だからと硬く身構えるのではなく、日ごろから親子で楽しみながら季節や行事を学んだり、本の読み聞かせをしたりすることをお勧めします。そのうえで、入試のために具体的な受験準備に1年ほどかけるといいでしょう。

また、近年子どもの自然体験や生活体験が乏しくなっています。土のグラウンドで走ったことがない、虫を見たことがない、触れない、掃除用具・調理器具など生活用具を知らない、使ったことがないなど。そこで、入試面接ではお子さんに自然・生活体験の有無を確認するような質問が増えています。こうした面の対策についても身構えるのではなく、お友達と外遊びをしたり、親子で野山にハイキングやキャンプに出かけたり、動物園に行ったりと、楽しみながら体験するといいでしょう。生活体験も同様に楽しみながら。掃除を手伝わせるだけでなく、用具を絵に描いてカードをつくり、ゲームにして遊びながら覚えさせたりする家庭もあります。

小学校受験の入試内容

次に試験の種類や方法について見てみましょう。

■ペーパー(プリント)
いわゆる筆記試験のこと。常識(季節ごとの行事や草花などから仲間外れを探す、電車のマナーなど生活常識を問う)、数量(数を数えたり、足したり引いたり、どちらが多いか比較したりする問題)、図形(同じ図形を探す、重ねたり回転させたりした図形を探す問題など。学校ごとに様々なパターンが出題されている)、言語(しりとりや3文字の名前の物は?など動物や植物の名称がしっかり身についているかを見る試験)。ドリル学習的要素。

■個別(口頭試問)
カードを数枚見せられてお話を作ったり、いろいろな物事について質問されたり、原則受験者1人に対して先生1人で行われる対話式の口頭試問。

■運動
跳んだり、走ったり、投げたり、マット運動をしたり、基本的な運動能力と先生の指示がきちんと聞けているかなども見られる。くまあるきといって、両手・両足を曲げずに使って歩く試験では、タイムがみられることも。くまあるきは筑波大学附属小学校などでよく出題されている。

■行動観察
他の受験生と一緒にゲームやグループ遊びをすることで協調性やリーダーシップなどその子どもの特性を見る試験。最近は行動観察を重視する学校が増えている傾向がみられる。あいさつや言葉遣い、態度など基本的生活習慣に関する面もみられる。

■指示行動
先生の言われた通りに運動などを行う。運動の試験に取り入れられることが多い。

■巧緻性
紙をちぎったり、ひもを穴に通したりするなど手先の器用さを見る試験。また服をたたんだりする試験などもあり、器用さとともにしつけ面が見られる。学校生活で人に迷惑をかけず、自分のことは自分でできるかどうかもチェックされる。行動観察に含む学校も。

■お話の記憶(記憶)
一定時間のお話を聞き、それについての記憶をみる試験。しっかりと人の話が聞けることが重要。テープで音声を流すところもあるし、お話の文章量も100文字~1,000文字と学校によって難易度はかなり異なる。難関女子校は概してボリュームが大きく、特に雙葉小学校は文章が長い(5000文字程度)ことで知られる。また、単純記憶だけでなく、お話から季節を推測したり数量を計算(12個のみかんを2つサルに、3つイヌに、残りは?)したり、道徳判断(あなたならこの場合どうしますか?)などを問われたりする場合がある。ペーパーのなかに含めて行う学校も。

■絵の記憶
一つまたは複数の絵を一定時間見せ、相違点や描いてあった場所を問う試験。これもペーパーのなかに含めて行う学校も。
試験はこうした種類を組み合わせて行われます。
特に志望校がペーパー(プリント)が試験に課されるかどうかで受験対策の仕方も異なります。ペーパーを課す学校は傾向と対策が分かりやすく、課さない学校(ノンペーパー校)の方が一見、受験をしやすいように見えて、合格する基準が分かりにくい場合が多いといえます。ノンペーパー校の場合、運動や行動観察でのリーダーシップ力などのファジーな要素を見る傾向が強くなります。
その例を挙げると――
【ノンペーパー校】
東京学芸大附属竹早お茶の水女子大学附属小慶應幼稚舎成城学園立教小学習院青山学院など。
その他の私立・国立難関校のほとんどが、ペーパー(プリント)を試験に課します。

また、学校によって入試で月齢を考慮する学校があります。幼児の場合、特に3月、2月の早生まれと4月、5月生まれの成長度合いが大きく違うということから、各生れ月を考慮して入試を行います。また、その場合、男女に分けて入試を行うことが多く、これは女児の発育が男児と比較して早い傾向にあるためです。
【月齢考慮をする学校】
筑波大附属小慶應幼稚舎早稲田実業学校学習院成蹊日本女子大豊明など

入学までにかかるお金

入学までにかかる費用の主な内訳としては、幼児教室(いわゆる受験塾)の授業料、夏期・入試直前の特別講習の授業料、模試代、ドリル代、受験料、願書用写真代、受験用の服(親子)・上履き等の費用――などです。
幼児教室の授業料は、およそ1コマ5,000円(教室の規模等により差があります)。模試は1~2万円(ペーパー、行動観察、面接など、模試の内容によって異なります)。ドリルは1冊1,000前後~2,000円。受験料は2~3万円。

ちなみに受験料3万円の学校は青山学院学習院慶應義塾幼稚舎白百合学園成蹊成城学園玉川学園立教女学院早稲田実業学校開智さとえ学園立教など。2万5千円は暁星淑徳聖心女子学院田園調布雙葉桐朋東洋英和女学院日本女子大学附属豊明雙葉横浜雙葉星野学園など。2万3千円は国立学園光塩女子学院など。2万2千円は湘南白百合学園国府台女子学院精華など。2万円は星美学園東京都市大学付属小学校宝仙洗足学園西武文理聖徳大学附属などと学校によって受験料の差があります。
国立小学校の検定料は、3,300円(1次が1,100円・2次が2,200円)です。
(以上私立・国立小学校とも2010年度入試/2009年秋入試)

幼児教室(週2回程度)に約1年間通い、模試を5回以上、ドリル・書籍を20~30冊購入し、3~4校受験したとして、冒頭に示した内訳をトータルすると100万前後~200万円ほどになります。もちろん幼児教室や模試を利用するかどうか、何校受験するかなど、それぞれ個人差があるので準備のしかたによって費用は異なります。なかには自宅学習を中心として、入試直前だけ幼児教室に通い、準備費用はトータル50~60万円で済ませ、合格したというケースもあります。

また、小学校受験合格者の家庭を取材すると、親子の受験・面接用の洋服にお金をかける必要はなかったという感想をよく聞きます。服装で受かるわけではないというのが経験者の実感のようです。サブバッグなどの小物類も手持ちのものがあればそれで十分という言葉が多く返ってきます。
では合格者の家庭に取材したなかから例を紹介しましょう。(以下入試直前は幼児教室に通う日数・回数が増えるなどしています)

1)慶應義塾幼稚舎に合格したAさんの場合は、幼稚園の年中の11月から1年間大手幼児教室(週2回)、体操教室、絵画教室にそれぞれ週1回通いました。合計すると週4回、何らかの受験向け教室に通われました。これらの授業料が月計15万円ほど。模試1~1万5千円(10回)。受験用の服として3万円(白シャツ、ベスト、ズボン、体操服上下)。願書用写真代が1校1万円ほど。4校受験。トータルで200万円ほど。(このほかに習い事として水泳教室など2カ所通いました)。

2)早稲田実業学校初等部に合格したBさんの場合は、幼稚園年中から大手幼児教室に通いました(週2回)。年長のときにかかった費用は、授業料が月13万円ほど。模試は1回1万円ほど(3回)。受験用の服として7万円ほど(半袖・長袖ブラウス、ワンピース、ジャケット、体操着上下、靴)。母親のスーツが10万円。願書用写真2万円。2校受験。トータルで200万円ほど。(このほかリトミック教室と週末の体験教室に通ったとのこと)。

3)青山学院初等部に合格したCさんの場合は、年中から個人の幼児教室と体操教室に通い、これらの授業料が月12万円ほど。かかった費用は、授業料、模試(5回)、ドリル代、幼児教室・体操教室の夏合宿、受験用の服等2年間トータルで300万円ほど。1校のみ受験。

4)桐朋学園小学校に合格したDさんの場合は、年長の夏休みから幼児教室に通いました(週1回)。授業料が月6万5千円。模試は1回1~2万円(3回)。ドリル代や情報誌など書籍代として計5万円ほど。受験用の服として3万円余(ボレロ・ワンピース)、3校受験で願書用写真代計5万円。トータルで54万円ほど。(このほかに運動試験用の服、願書で家族写真が必要な学校があり、家族5人分の服を購入)。

5)暁星小学校に合格したEさんの場合は、幼稚園年少の冬から幼児教室に通いました(年少週1回、年中・年長週2回)。かかった費用は教室の授業料、入試直前講習会、模試(13回ほど)を含め月平均25万円ほど。4校受験。トータルで年長時は300万円余。

6)白百合学園小学校に合格したFさんの場合は、年長の春から自宅でドリル学習を始め、5月から体操教室に、9月下旬~10月まで個人の幼児教室に通いました(それぞれ週1回)。かかった費用は、ドリルが1冊2,000円、体操教室の授業料は月8,000円、幼児教室は計10万円ほど、模試は1回1万5,000円(10回)、母親の面接用服が7万円(丸襟のツーピース)。白百合学園のほか2校出願。準備費用はトータルで50万円ほど。

7)日本女子大学附属豊明小学校に合格したGさんの場合は、年少の冬から大手幼児教室に通いました(年少週1回、年長週2回)。年長のときにかかった費用は、授業料、ドリル代(教室で販売されているもので1冊1,000円以内、数十冊購入)、夏期講習、模試(12回)等で計150万円ほど。願書用写真1枚1万5,000円。受験用の服として4万円ほど(半袖ワンピース・長袖ボレロで3万円、運動用のキュロットスカート・ブラウスで1万円)。母親は夏の学校説明会用で半袖と長袖のアンサンブル、受験面接用のスーツで計23万円。2校受験。トータルで180万ほど。

8)東洋英和女学院小学部に合格したHさんの場合は、1年間大手幼児教室に通いました(週2回・3コマ)。かかった費用は授業料、模試(1回15,000円・20回ほど)、ドリル代を含め月平均15万円ほど。このほか夏期講習が40万円。トータルで250万円ほど。

問題集・模試の活用法

問題集はペーパー(プリント)対策用の過去入試問題などが市販されており、多くの家庭が利用しています。ただし、西武学園文理など一部を除き、学校は基本的に入試問題を公開していません。過去問題は受験者の情報(子どもや親)をもとに作成しているので、本番の入試そのものではありません。
問題集は幼児教室でも販売しています。教室に通っている人の多くはそうした問題集を利用しています。教室のほうもそれらの問題集から宿題を出したりします。
これはしばしば言われることですが、行動観察のみの入試であっても、ペーパーの学習・訓練は必要です。行動観察では先生の指示を理解し、それを実行するなどを通して知能の成長や学習態度・集中力などもみられるため、こうした能力や態度をペーパーで養っておくことが大切です。

また、入試にペーパーがある場合は概して問題量も多いので、しっかりと準備しておきましょう。暁星白百合学園雙葉などは、時間に比して問題量が多いし、接戦になるので高得点をねらうつもりで準備する必要があります。お子さんが暁星に合格した家庭では、入試直前はドリルを一日100~200枚、1枚1分以内で解く練習をしたそうです。

問題集は毎日時間を決めて行うのが理想ですが、子どもにとってそれは容易ではありません。勉強の習慣づけに苦心するご家庭も多いことでしょう。
また、この年齢は脳の成長期にあるため、かえって一時的に理解が遅くなることもあります。それは次の成長に備えて脳が準備をしているためとも考えられているので、焦らずに少しようすを見たり、ペーパーを一休みしたりするといいでしょう。夏休みを終えてまた急に伸びたりする場合があります。

というわけで、実際どこのご家庭でもあれこれ工夫しながら問題集をやっているようです。たとえば、巧緻性の練習やゲームを取り入れた学習をしたあとにペーパーをする、幼稚園を挟んで朝と午後にやる、一日分のプリント分をホチキスで止めておき、どれくらい進めば良いか子ども自身もわかるようにして達成感を持たせるなど、その子どもに合わせて学習させています。

気をつけたいのは、理屈を根本から理解させること。ペーパーは慣れてくると感覚でできるようになります。こなす量や速さに気をとられていると、理解がおろそかになってしまうことがあるので注意。積み木やおはじき、折り紙など具体物を使ってしっかりと理解させるようにしましょう。断面図の勉強では粘土で立方体を作って教えたりする家庭もあります。

最近ではDVDの問題集も出ています。入試当日と同様に先生の声を聞いての巧緻性の訓練などができるので、利用する手もあります。巧緻性の試験では、先生が示したことをまねるといった問題が出されることがあります。DVDでそうした練習をするといいでしょう。

小学校受験用問題集

模擬試験は、本番の入試が行われる私立小学校や大学で行われる場合もあり、いつもと違う環境で「いつもの力を発揮できる」力をつけるのには最適です。また知らない子どもたちといっしょに受験することも、本番の入試に近い環境といえます。

模擬試験は結果が悪いと自信がなくなる、ある程度成績が良くなってから……という方も多いと思います。でも模擬試験は結果(順位等)だけにこだわるのではなく、弱点を発見する機会として冷静に受け止めましょう。また、子どもはその日の体調や気分などにより、結果にバラつきのあるもの。思わしくない結果であっても、挑戦したこと自体をほめ、精神的な強さを養っていきましょう。力試しをするのではなく「合格する力」をつけるために、模擬試験をたくさん受けておくことをお勧めします。

模擬試験の具体的なメリット・ねらいをいくつか挙げると――
■本番の入試は1時間半から、長い場合は半日程かかる場合もあるため、模試によって集中力や忍耐力を養う。
■模試によって制限時間を意識させる。
■本番の試験では、初めて会う人の言葉を理解しなければならないが、子どもは普段通っている教室の先生や両親の言葉・指示は理解できても、馴れない人の言葉は理解できない場合がある。また、本番では1回の説明で聞き取らなくてはならない。そこで、模試によっていかなる先生の言葉も1回で理解し、いかなる状況でも実力を発揮する力を養っておく。
■まわりに仲のいい友達がいると、つい真似をしたりのぞいたり……でも、本番の入試は自分一人。模試は自分で考え、行動する自立心を養うことも目的の一つ。
■本番の入試では待ち時間があり、この間、子どもの様子をチェックしている学校もある。模擬試験はテスターの指示に従って行動する訓練になる。

模擬試験の種類として、行動観察用の模試、ペーパー対策用の模試、ペーパー・運動・行動観察・個別・絵画制作など総合的に行う模試、志望校別模試などがあります。年間を通して行われているので、これらの模試を組み合わせながら受けるといいでしょう。また、通っている幼児教室の模試だけでなく、規模の大きい外部の模試も受けておくことをお勧めします。

面接試験対策

小学校受験では面接が重視されます。特に家庭の教育方針が学校と一致しているかが重視されるので、学校研究をしたうえで面接の準備をしっかりとしておく必要があります。
面接の種類は、
1.保護者面接
2.保護者・志願者(親子)面接
3.志願者(子ども)面接
4.親子面接+志願者個別面接

このなかで保護者・志願者面接を行う学校が大半です。次いで保護者面接で、志願者のみの面接を行う学校は2割程度です。なお、面接を行っていない私立小学校は、慶應義塾幼稚舎(願書重視。文章力を要する)、桐朋小学校桐朋学園小学校、国立では筑波大学附属小学校東京学芸大学附属竹早小学校千葉大学教育学部附属小学校東京学芸大学附属世田谷小学校は面接を行いませんが、保護者アンケートを行っています。

面接日は入試考査と同日か、考査日以前、または以降に行う場合があります。考査日以前に行う学校は青山学院国立学園白百合学園聖心星美学園田園調布雙葉立教立教女学院湘南白百合学園精華清泉洗足学園森村(保護者面接は入試前に実施、子どもの面接は考査当日実施)、横浜雙葉西武学園文理星野学園成城学園など。考査日当日または以降に実施する学校は、学習院光塩女子学院成蹊日本女子大附属豊明国府台女子学園など。暁星早稲田実業学校は1次合格者のみ2次で面接。

次に面接で親によく聞かれることを挙げると――
1.学校や子どもに関すること
志望動機、学校の印象、学校に期待すること、通学方法・通学手段、宗教についての考え、女子教育(女子校)・男子教育(男子校)について。家庭の教育方針(どんな子どもに育てたいか。そのためにどうしているか、またどうすればいいと思うか。どんなときに叱り、またほめるか)、どんな学校生活を送ってほしいか、子どもの性格、子どもの長所・短所・健康状態、幼稚園のこと(幼稚園での教育、幼稚園でどう成長したか。先生から子どもについてどう言われているか)、生活面(生活面ではどのようなことができるか。食事のしつけはどうしているか)、子育てで感動したこと、子どもの成長で感動したこと、子どもが好きな絵本、読ませたい本(その理由)、子どもが好きなこと・得意なこと、最近親子でどんな遊びをしたか、いつもどんな会話をするか、休日の過ごし方など。

2.親自身に関すること
趣味。日ごろ大切にしていること・もの。最近うれしかったこと、気になる社会問題・教育問題。夫婦の協力、父親・母親の役割についてどう考えるか、そのために家庭でどんなことをしているか。妻または夫の子育てについてどう思うか(妻・夫それぞれに質問)、夫の仕事(夫に質問)など。

1.の志望動機や学校に期待することは、もちろん学校の教育方針や校風をふまえて答えてください。また、学校で学ぶご本人であるお子さんの資質や願いをふまえることも大切です。宗教についての考えは、キリスト教主義や仏教主義の学校で聞かれます。またキリスト教の場合、カトリックかプロテスタントかによって方針や校風が異なることに注意。カトリックは家庭的な雰囲気、学校と家庭のかかわりも深く、面倒見のよさが特徴の一つともいえます。プロテスタントは自主自律を重んじ、基本的に生徒・家庭の主体性が求められます。

2.は特にご夫婦で話し合っておくことが大切でしょう。またこれはある学校の校長先生と話をしているときに、その先生が言われたことですが、「ご両親が一人の大人としてどんな趣味を持ち、どんなふうに生活を楽しんでいるかを知りたい。小さな植木をかわいがるのでもいい、自分の時間を持ち、暮らしを楽しんでいる両親のいる家庭は、きっとすてきな家庭だろうと思うから」と。
時事問題については社会・教育など広く関心を持つようにしましょう。教育関連ではキーワードとなっているもの――いじめ、家庭の教育力、学校・地域・家庭の連携、子どもと携帯電話・インターネットなど――について、ご自身の考えや家庭の方針を答えられるようにしておきましょう。

面接で志願者(子ども)によく聞かれることは、名前、年齢、幼稚園の名前、家族の人数(構成)、先生・友だちの名前、今日はどうやって来たか(交通手段)、今朝は何を食べたか、どんな遊びをするか、好きな食べ物・きらいな食べ物、好きな絵本・テレビ番組(なぜ好きか、どんなところが好きか)、お母さんの料理でどんなものが好きか、お父さんといっしょにどんな遊びをするか、親・先生にどんなことでほめられたか、叱られたか、友だちとけんかをしたときはどうするか、お手伝いはなにをしているか、将来は何になりたいか、電車・バスでしてはいけないことなど。

別項でも書きましたが、近年、子どもの体験が少なくなっていることから、自然体験などの質問が増えています。体験を重視する早稲田実業学校に合格した女のお子さんは、虫捕りの体験を話したら、重ねて質問されたそうです。

さて、ずいぶん難しい質問をたくさんされるのだなと思われたかもしれません。でも面接時間は5分~10分程度。質問の数は限られているし、深く掘り下げて聞かれるわけでもありません。常識的に、またなるべく簡潔に答えるようにしましょう。それと、体験を交えるなどして具体的に答えられるといいです。たとえば「子育てで感動したこと」について、自分や家族の出来事を示しながら答えるなど。
学校側は第一志望者に入ってもらいたいもの。だから中途半端な態度は禁物です。家庭の意思を直接示す場である面接で、ぜひここに入りたいという意思をしっかりと示しましょう。

面接の服装としては、親子とも華美でないシンプルな外出着がいいでしょう。カジュアルな服装は避けましょう。母親は紺系のスーツ、父親は紺またはグレー系のスーツを着用する人が多い。アクセサリーは控えめに。
子どもの服装として、軽い運動を入試に課すかどうかによって変わってきます。女の子はボレロまたはジャケットとワンピース、ブラウスとスカートなどの服装が多い。色は紺無地。ブラウスは白。運動の試験がある場合は、運動用としてブラウス・ポロシャツとキュロットスカートなど。

男の子はシャツ・ズボンにジャケット、あるいはベスト・セーター。運動の試験がある場合は、運動用としてポロシャツ・ベストなど。色は女の子と同様。
受験者数の多い学校の場合は、少し目立つ格好をしたほうがいいと言われることも。それでも派手なスタイルは避けましょう。スカートならグレー系の細かいチェック柄のものを着る受験者もいます。またこれは希ですが、毎年志願者トップの某私立人気校では、“勘違い”して真っ赤なダウンジャケットを羽織って受験しに来た子どももいたとか。派手な服装はまわりの子どもの調子を狂わせてしまうことも考えられます。

すでに別項でも書きましたが、受験を経験したご家庭の率直な感想として、「親子とも服装を気張る必要はない。学校は短い面接時間のなかで服装などは特に見ない。服装で受かるわけではない」という言葉が多く寄せられています。常識的で清潔感があり、いっしょに受験する子どもたちに迷惑をかけない服装であればそれでかまいません。もし迷ったときは、受験する学校の制服を参考にするといいでしょう。
また、受験用の服に当日初めて袖を通すのではなく、予行演習のつもりで事前に着てみることを勧めます。試験前に本番と同じ格好をさせて受験校まで連れて行ったというご家庭もあります。