取材レポート

関西大学初等部

“考え方”を具体的に学ぶミューズ学習を基盤に確かな学力と豊かな感性を育む
休校中もwebを使った遠隔授業で子どもたちの学びをサポート

JR高槻駅から徒歩すぐというアクセス至便な立地に佇む関西大学初等部。全学年を合わせても360名程度という小規模校ながら、教員をはじめ、常駐スタッフは68名、警備員や事務室、放課後のミューズっ子クラブまで含めるとスタッフ数は158名にのぼります。たくさんの大人による手厚いサポートが、保護者の高い満足度を得ていることは、アンケート調査でも明らかになっています。

全国の教育関係者からも注目を集めるミューズ学習をはじめwebを使った遠隔授業など、関西大学初等部の教育について校長の長戸 基先生にお話をお伺いしました。

関西大学初等部校長 長戸 基 先生のお話
長戸 基 校長先生

長戸 基 校長先生

関西大学初等部校長 長戸 基 先生のお話

思考力とコミュニケーション能力を育む「ミューズ学習」

関西大学初等部では、「感性豊かで、考え・挑戦する子を育てる」を目標に、「考える」ということを中核に据えたカリキュラムが組まれています。なかでも、同校の代表的な教育であるミューズ学習が特徴的です。「考え方を考える」をテーマに、シンキングツールというワークシートを使い、具体的な操作とともに「考えるための技=思考スキル」を身に着けるための指導が行われています。

様々な種類がある思考スキルのなかでも、各教科で共通して使える6つに絞って、学習を展開。その中のひとつ「比較する」では、ベン図というシンキングツールを使います。教える際に何よりも大切にしているのは、子ども達にベン図を使って良かったと思わせることだそう。

「使い方を教えられ、先生に促されて使ったとしても、子ども達にとってもは全然必要じゃないし、やってみたいという意欲もわきません。ベン図を使うと便利だな、よく分かったな、など子ども達が納得できる触れ合わせ方をすることで、ベン図を使ってみようという意識を与えることが一番大切だと感じています」と長戸先生。

例えば、1年生でのベン図の導入時に行う先生比べ。「A先生とB先生を比べてみよう」と言うと、子ども達は性別や背の高さなど、違いにしか目が行かないそう。そこでベン図の登場です。各々の先生の特徴を円で囲うと、真ん中に円の重なる部分ができます。そこを指して、「ここには同じ所が入るよ。じゃあ、同じ所は何があるかな?」と聞くと、「目がある!」など、たくさんの意見が出てきます。

これは、「比べる」ということについて何も教えないと、子どもは違いにしか目が行かないということを示しています。ベン図を使って体験的に学ばせることで、「比べる」ということは違いだけでなく、共通点にも目を向けないといけないということを、子ども達は意識できるようになります。

また、ツールを使うことで、自分の考えを見える化し、整理することができるようになり、同じツールを使って思考することで、同じ物事でも人によって捉え方が違うことが一目で分かるというのも利点です。友達がどのように考えてその回答に至ったのかを、見て理解できるので、より適切なコミュニケーションを取ることができるようになります。

ベン図

ベン図

ベン図

ベン図

失敗を通して学ぶことも大切に

先進的な思考力育成の取り組みとともに、注目されるのが豊富な体験学習です。色んな面で子ども達を人間的に成長させたいと、低学年から宿泊行事が実施されています。

5年生で行われる徳島県南阿波での漁業体験や農業体験は、3泊4日のうち2泊は民泊です。小グループで現地のお宅にお邪魔するのですが、先方には「子ども達をお客さんにしないでください。コキ使ってください」と伝えるそう。実際、どの家庭でも子ども達が料理などの家事を手伝います。この体験が、6年生でのオーストラリア修学旅行でのホームステイにつながります。

「修学旅行に行って、うまく行ったという子もいれば、全然しゃべられなかったという子もいるんです。ただ、そういう失敗したと感じた子たちはとても良い体験をしたのではないかと思います。私たち教員が100回、英語は大切だよと伝えるよりも、たった1回の“しゃべれなかった。もっとしゃべりたかった”という体験の方が重要です。できなかったことが、これから先の学習のモチベーションになっていく。
色んな体験を通して、いっぱい失敗もすればいいんです。失敗を通して学んでいくということを大切にしているのが我が校です」
5年生 宿泊行事

5年生 宿泊行事

5年生 宿泊行事

5年生 宿泊行事

修学旅行

修学旅行

休校中もICT活用で、教員と子どもとの双方向のやりとりが実現

関西大学初等部では小学1年生から1人1台iPadを使える環境を整備。3年生以上はiPadも個人所有となり、持ち帰って家庭学習に使えるようになります。充実したICT環境のもと、思考力育成の取り組みを行う同校の教育は先進的であると認められ、世界400校、日本では7校しかないApple Distinguished School 2018-2021にも選ばれました。

新型コロナウイルスによる今回の休校期間中もICTを活用。学年ごとの家庭学習の課題もメールやブログなどを使って、随時提出・追加も可能です。また、リアルタイムで児童参加型のオンライン授業も行なっています。低学年向けには、教員が動画を作成し、YouTubeの限定公開機能を使って、自宅で見られるように公開しています。

2020年度4月13日以降は、遠隔授業用の特別時間割を作成し、朝は9:30から全学年がオンラインのテレビ会議で朝の会、その後45分間の授業を3コマ行っています。

3年生以上は、各自、iPad ともう一つ別のPCやタブレットなどの2台のデバイスを使用。2台同時に使うことで、1台のデバイスでテレビ会議でお互いの顔を見ながら、もう1台のデバイスで情報(データ)のやりとりができます。子どもたちは登校することができなくても、オンラインで友だちや教師と双方向に情報をやりとりし、自宅にいながら教室での学びを体験することができます。

1・2年はデバイスは1つです。朝の会で、お互いにみんなの顔を見て、先生やお友達とお話したあとに授業開始。授業は、先生の説明を聞いたり、YouTubeの動画などを見たりして、各自で課題に取り組み、取り組んだ課題を保護者が写真撮影して教師に提出。教師が丸つけやコメントをつけて、保護者に返信という双方向の情報のやりとりによって授業を進めていきます。

ちなみに、毎日放送の情報番組「ミント!」から、本校のインターネットを利用した遠隔学習について取材依頼があり、2020年4月13日(月)に撮影、14日(火)放送がありました。新型コロナウイルスの関係で外出を自粛している状況ですが、子どもたちが楽しんで学習に取り組んでいる様子を放映していただきました。

テレビ会議システムを利用した海外の小学校との交流も盛んです。先日も2年生が、韓国・花津小学校の子ども達から贈られた韓国ごまを使って、両校でこま回し対決も行われました。

安全・安心に通える学校作りを目指して

関西大学初等部の安全対策は、“危機対応を早く、安全安心を第一に”がモットー。今回の新型コロナウィルス対応も、1月28日の時点で全教室に消毒用アルコールを設置。手洗いを励行し、入室の際には必ず消毒することを徹底しました。2019年に川崎市で起こった通り魔事件の際も、事件当日に学校としての対応をメールで保護者に連絡し、協力をお願いしたそうです。
また、いじめや仲間はずれへの対応もきめ細やかです。

「今年度のアンケート調査では“いじめや仲間はずれをしていませんか?”という項目で、4%の子が当てはまらないに丸をしました。昨年は0%でしたので、統計的にはマイナスですが、私たちはそうは思っていません」と長戸先生。

校長である長戸先生も、何があったかを担任から聞いて、事実を把握し、どのような指導をして、子ども達がどんな反省をして、保護者がどういう反応したかということを全て聞いています。きちんと子ども達に指導が入り、子ども達が「自分たちがやったことがいじめである」ということを認識し、反省していることが、この4%という数値に現れています。

「間違いや失敗をすることは誰しもあること。ただ、間違いがあった時、事実を包み隠さず明らかにして、子ども達に何が間違っていたのかを自覚させ、どうするべきなのかということを教える。それが大切です。これからも問題があった際、決してうやむやにせず、事実を明らかにし、適切に対応していきます」

取材を終えて

取材時に、国語科の教員が低学年向けに作成した『動物早口あいうえお』の動画を試聴させていただいたのですが、とても楽しく、急いで作ったとは思えない本物の教育番組のようなクオリティの高さに驚きを隠せませんでした。
急な長期休校措置の中でも、試行錯誤しながら、状況に応じて学びを配信しようと奮闘する姿に、教員の方々の子ども達への愛情や学びへの熱意を感じ、「日本一の小学校を創ろうと全国から教員が集まっています」という長戸先生の言葉にも得心しました。

長戸先生の言葉には続きがあります。「保護者の方にも、『私たちと一緒に日本一の学校を作っていきましょう』と呼びかけているんです」。保護者を共に日本一の学校を作っていくための仲間として捉えているからこそ、入試に関することから、いじめなどの問題があった場合まで、包み隠さず明らかにしているのでしょう。共に歩んでいくパートナーとして、関西大学初等部はとても心強い小学校であると感じた取材でした。

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