取材レポート

東京女学館小学校

東京女学館小が目指す異文化交流
伸びようとする芽を見極めて育む様々な教育プログラム

東京女学館小学校では、「高い品性を備え、人と社会に貢献する女性の育成」を教育目標に掲げ、国際社会で活躍する女性リーダーの育成を目指した教育活動を展開しています。2020年度の入試や同校が目指す異文化交流などについて、田中均校長先生にお話を聞きました。

東京女学館小学校 校長 田中均先生のお話

東京女学館小学校 校長 田中均先生のお話

小学校教育では「伸びようとする力」を育む

小学校教育では、子どもたちの「伸びようとする力」を育むことが重要だと考えています。子どもたちには伸びようとする「芽」があり、誰もが伸びようとしているのです。木にたとえるなら、本校では盆栽のような育て方をしたいと思っています。盆栽を育てるためには、木の勢いを活かしながら剪定することが大切です。庭全体を見て一定の形に刈り込んでいくイングリッシュガーデン(整形式庭園)のように剪定してしまうと、大切な枝を切り落としてしまうかもしれません。どの枝を活かすかは、それぞれの木によって異なり、それをしっかり見極めないと伸びようとする力を育むことができません。そして、木の「根っこ」を育むのが家庭教育です。家庭教育からスムーズにバトンを受け取り、継ぎ目や段差のない状態で小学校教育へつなげていくことができるかを判断するために、入試を行っています。

一生懸命になれることが学びのベース

先日の学校説明会で、考査の内容について公表しました。一般入試では、「ペーパーで答えを書いたり、道具を使って操作や作業をしたりする考査」、「友だちと話し合ったり保護者に伝えたりしながら表現する考査」、「友だちと協力して課題に取り組んだり運動したりする考査」、「道具を使って描き表したりお話をして相手に伝えたりする考査」という4つのパートで選考を行い、複数の選考担当者の考察結果を総合して判断します。Web出願の導入もあり、本校の入試が変わったような印象を与えたかもしれませんが、入試自体はこれまでと変わっていません。本校が求めている児童を一言で表すとすれば、「もっとも子どもらしい子ども」です。
「子どもとは生きる真剣である」と言った教育学者がいましたが、子どもはそのときそのときを一生懸命に生きています。一生懸命であることが一番子どもらしい姿であり、一生懸命になることで、想像力をはじめとするいろいろな力がわいてくるのです。日光での校外学習のとき、そのことを実感する出来事がありました。横倒しになった大きな切り株を見て、子どもたちは「ユニコーンだ!」と言ったのです。一生懸命だから、想像力が働きます。想像力が意欲や共感性につながり、学びへと向かう力のベースになるのです。それこそが家庭教育で大事にしてほしいことであり、我々が受け止めるべきものだと考えています。

子どもたちが生き生きと輝く瞬間

創立130周年を記念して作られた「School Photo Book」には、子どもたちの生き生きとした表情が10の動詞をテーマに集められています。10の動詞とは、「いどむ」「かたらう」「かなでる」「ききいる」「ささえる」「つたえる」「ときめく」「はげむ」「はなやぐ」「みつめる」。これが、もっとも子どもらしく生きている子どもたちが見せる姿だと思っています。各家庭でも、様々な体験をさせていると思いますが、特別な旅行などをしなくても、日常生活の中でも体験できることはたくさんあります。家の近所を散歩するだけでも十分なのです。本校の入試では、「できた」「できない」を見ているのではなく、その向こう側にある子どもの姿を見ています。限られた時間の中で、試験に取り組んでいる子どもの姿に現れている「根っこ」の部分を見ているのです。保護者との面接では、時事問題などの雑談を通して、「根っこ」が育まれた環境を見たいと思っています。

自国の文化を知りグローバルな視野を養う教育プログラム

家庭教育というベースの上に積み重ねて行くのが、小学校教育です。本校では「リーダーシップの教育」「学び続ける力の教育」「アイデンティティーの教育」という3つの柱のもとで、教科や行事のほかに「すずかけ」「つばさ」「国際理解」という教育プログラムを取り入れています。 「すずかけ」の授業では、華道、茶道、邦楽、着付け、日本舞踊などを実施。文化・伝統から作法を学び、日本人としてのアイデンティティーと高い品性を身につけることを目的としています。総合学習の一部である「つばさ」は、体験学習と情報教育で構成。自分の力で羽ばたけるように自ら考え、自ら学ぶ力を育成します。「国際理解」の授業では、国際社会で活躍できる女性リーダーの育成を目指し、コミュニケーションのツールとしての英語を身に付ける英語教育を実施。語学だけでなく、異文化に触れて国際性を養うための体験学習を低学年から導入し、高学年では海外での英語研修も行っています。

異文化交流の場で日本の文化を伝える力

イングリッシュキャンプ(5~6年生希望者)やオーストラリア・タスマニア研修(5~6年生希望者)では、異文化交流にウエイトを置いています。例えば、タスマニア研修では「ジャパニーズデイ」という日を設けて、提携校の子どもたちに浴衣を着せてあげたり、茶道や書道、日本舞踊なども見せます。本校の子どもたちは「すずかけ」の授業を通して、自分で浴衣を着られるだけでなく、人に着付けもできるようになっています。現地の子どもたちは「アメイジング!(Amazing!)」と言って喜んでいました。海外研修は、現地から学ぶことばかりになってしまいがちですが、日本の文化を紹介する機会も作り、相互でなければ本当の意味での異文化交流にはなりません。また、現地の子どもたちとの様々な体験を通して、国民性の違いを感じることにも大きな意味があります。そのような体験を通して、英語をコミュニケーションのツールとして使えるように学んでいくのです。

英語圏以外の国とも異文化交流

英語圏だけでなく、英語を母語としない国の子どもたちとの交流を増やしていきたいと考えています。お互い英語が十分にできない場面で、どのようにコミュニケーションしていくかを考えることが重要です。チェコの芸術基礎学校との芸術交流は3年目となり、図工の作品交換と音楽交流を隔年で行っています。今年10月には、ロシアのウラジオストクから日本語を勉強している5年生が来日します。相手はたどたどしい日本語を使い、こちらはロシア語ができない状況で、子どもたちはどのようにコミュニケーションするのでしょうか。英語を使って通じれば、その経験が英語を学ぶ意欲につながるかもしれません。交流の準備段階としてチェコ大使館、ロシア大使館の訪問を行っています。ドボルジャークやチャイコフスキー、バレエやアイスホッケーなど両国の文化や芸術の紹介を聞くと、遠い国と思っていたチェコやロシアも身近なものに感じた子どもも多くいました。本校はユネスコスクールへの加盟申請を準備していますが、これを機に、あまりなじみのない国、文化や気候をイメージしにくい国などとの交流を増やしていきたいと思っています。小学校時代の国際交流の幅の広がりは、中学生、高校生になってからの英語圏の国との交流をより深いところで理解し、進めていく力になるのではないでしょうか。そのような体験が、「自立志向」「地球志向」「共生志向」「未来志向」の子どもたちを育成することにつながっていくと考えています。

取材協力

東京女学館小学校

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