取材レポート

成城学園初等学校

成城学園初等学校「新校舎完成」
「学び」と「つながり」を具現化した子どもたちのための学校

成城学園初等学校は、成城学園創立100周年記念教育環境整備事業の一環として、校舎の建て替えと改修を実施。2019年9月から使用開始となった新校舎について、校長の渡辺共成先生にお話を聞き、6年生の児童2人に感想を聞きました。

成城学園初等学校 校長 渡辺共成先生のお話
6年生の児童2人にインタビュー

成城学園初等学校 校長 渡辺共成先生のお話

コンセプトは「森の中にたたずむ学び舎」

新校舎建設は、10年ほど前に当時の教員たちが議論して、校舎への思いを語り始めたところからスタートしています。初等学校OBたちの願いでもあった新校舎は、「森の中にたたずむ学び舎」というコンセプトで建築されました。学校は1日の中でも長く過ごす場所なので、子どもたちが伸び伸びと過ごせる、居心地のいい場所であることが大切です。第1校舎、第2校舎、第3校舎、講堂という4つの建物のうち、建て替えられたのが第3校舎、それ以外は改修しました。今まで以上に毎日通いたくなるような学校を目指し、「学び」と「つながり」を具現化した建物となっています。2017年に創立100周年を迎え、「第2世紀の成城教育」を推進するために様々な取り組みを行っていますが、その象徴となるのが新校舎です。

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豊かな人間関係を築く「つながり」のある空間

新校舎の外見は2階建てですが、一部は地下1階まであります。第3校舎は西棟・中央棟・東棟の3棟からなり、1年生から6年生まで18クラスの普通教室をすべて2階に配置しているのが大きな特徴です。「つながり」(異年齢活動・交流)の授業を踏まえて、西棟・中央棟・東棟それぞれに、同じグループの1年生から6年生のクラスが配置されています。普通教室は木のぬくもりが感じられることにこだわり、設計段階から施工まで何度も修正を重ねて、木組みの教室が実現しました。風が吹き抜け、太陽の光や木の香りを感じることができる教室です。黒板とチョークもありますが、スライド式の電子黒板やモニター、書画カメラもあり、ICT機器も活用できます。

中央棟1階には、「つながる~む」と名付けた部屋を配置。ガラス張りの広い空間は、間仕切りで3つに区切ることもでき、「つながり」の授業などで使用します。椅子が置いてあるだけで、普段はただの広い廊下のような空間かもしれません。それをどのように使うかは、子どもたち次第です。「つながる~む」の奥には、「図書のへや」(図書室)があります。本校には本好きの児童が多いので、開放的で入りやすい部屋がいいと考えました。図書のへやは一人ひとりの個性を引き出し、様々な分野に関心を持つきっかけとなるので、多くの子どもたちに利用してほしいです。敷地内の全校舎が渡り廊下と、ひとつながりの長い廊下で結ばれており、階段横や下の「DEN」(英語で洞穴や隠れ家の意味)というスペースなど、子どもたちが集まったり自由に過ごせる場所を多く作りました。

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新施設で新しい学びも実現

西棟1階には、理科の実験室が2つあり、目の前に広がる「かんさつの森」ではたくさんの動植物との出会いがあります。子どもたちにとっては、苗木1本でも教材です。西棟地下1階にあるスタジオ併設の「映像のへや」は、映像表現やプログラミングを学ぶ部屋です。16ミリフィルムを使った映画制作からスタートした「映像」の授業は、今の時代に合わせてグリーンバックを使った撮影なども含めて映像制作を行っていきます。撮影するだけでなく、それを組み立てて作品に仕上げるまでの編集作業も子どもたちがすべて行うのです。コンピューターを使ったプログラミングの授業も行いますが、映像を組み立てていくことからも論理的思考力を育みます。

第2校舎2階には、「英語のへや」が作られました。間仕切りで2つに区切ることもでき、机にはマグネットがついているので、多様な学習形態が可能です。英語の授業はネイティブ教員と日本人教員のチームティーチングで、4技能のうち特に「話す」と「聞く」に力を入れています。本校での学びは、どの教科もすべてがアクティブラーニングです。教員が一方通行で教えることはほとんどありません。各テーマについて子どもたち自身で考えて、そこから生まれた自由な発想を大切にしています。それぞれから違う考えが出れば、そこからディベートが始まります。「アクティブラーニング」という言葉が注目される前から、本校では行われてきたことです。

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創立者から受け継ぐ4つの「希望理想」

新校舎によって、創立者である澤柳政太郎から受け継いできた、4つの「希望理想」を具現化するための環境が今まで以上に整えられました。「個性尊重の教育」「心情の教育」「自然と親しむ教育」はもちろんのこと、「科学的研究を基とする教育」に関しても充実しています。本校では「研究」と「教育」を車の両輪と考えており、教員が「研究」に集中できるように英語研究室、国語文学研究室など、教科ごとの研究室があります。「個性尊重の教育」や「心情の教育」についても、これまで以上に充実。例えば、「美術」の授業は、1年生から6年生まで絵・彫塑・工芸という3つの分野に分けて行っており、3分野それぞれ担当の教員がいます。今回、彫塑の授業で使う「焼成窯」(電気炉)を新設しました。「劇」や「音楽」の授業については、発表の場となる「劇の会」や「音楽の会」で使う講堂も音響施設を充実するなど改修されています。

新設した設備もありますが、以前から子どもたちに人気の「地獄谷」(雑木林)や、わんぱく相撲が行われる土俵などは残しました。本校ではクラス名が「けやき」「つばき」「うめ」といった植物名になっており、そのほとんどを校内で見ることができます。都会にありながら、「自然と親しむ教育」が校内で実現できる環境です。世田谷区の保存樹木などの古い樹木もあり、桜や紅葉など四季折々の風景に癒されます。タブレットやPCだけに頼らず、「本物の感触」を知ることが大切です。本校には、「木登りをしてはいけない」というルールはありません。登りたい子は登っていますし、外遊びもおおいにやってほしいと思っています。そのために、安全面に関しても様々な配慮をしています。

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子どもと保護者、教員が連携する「三位一体の教育」

教員と保護者が連携して子どもの成長を促す「三位一体の教育」は、新校舎でも継承していきます。保護者の皆様には様々な場面で、ご理解やご協力をいただいております。子どもたちのことを第一に考えた校舎が実現でき、教員たちもこれまで以上に、子どもたちを近い距離で見守れる環境となりました。以前から、各担任の机は職員室ではなく、担任となった各クラスにあります。「ぶな」や「たちばな」といったクラス名の札にも、各教員の好きなことや思いが込められています。本校では教員がクラス名を持っているので、学年が変わると教員とともに札も移動します。

幼稚園から大学までがワンキャンパスにあるので、子どもたちはお兄さんやお姉さんの背中を見ながら、中学・高校・大学へとステップアップしていきます。創立100周年には、大グラウンドで幼稚園児から高校生まで全員と、そして大学生も一部参加した合同体育祭が開催されました。卒業生にも支えられて、これからますます縦の「つながり」が広がっていくでしょう。本校の受験を考えている方には、ぜひ学校を見ていただきたいです。今まで以上に豊かな環境の中で、子どもたちが子どもらしく成長していくことを願っています。

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6年生の児童2人にインタビュー

2学期から新校舎に通いはじめた子どもたちの感想

6年生・女子
「まだ少し迷いそうなところもありますが、すごくきれいで使いやすい校舎だなと思いました。私は本を読むのが好きなので、図書室がきれいになって嬉しいです。冒険系の本など、1か月に5冊ぐらい読みます。この学校は劇なども積極的にやっているので、小学校に入ってから劇などで表に出ることが好きになりました。今では、いろいろな役に立候補しています」

6年生・男子
「仮校舎ではサッカーなどができなかったのですが、小グラウンドでサッカーができるようになって嬉しいです。新しい校舎は、1年生から6年生まで同じグループが1つの棟にまとまっています。「つながり」の授業などで1・2年生を呼びに行くのが楽になり、集まりやすくなりました。学校の授業は難しいところもありますが、先生がわかりやすく教えてくれるので、楽しく勉強できます」

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取材協力

成城学園初等学校

〒157-8511 東京都世田谷区祖師谷3-52-38   地図

TEL:03-3482-2106

FAX:03-3482-4300

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